「グロテスクは焼き付いて」《新世紀エヴァンゲリオン》
新世紀エヴァンゲリオン。
僕が初めて、《能動的》に見たアニメです。
それまでは《受動的》に、アンパンマンとか
ドラえもんとかを、ケーブルテレビの「キッズステーション」で見てはいたんですけど、自分から見たいと思ったのはこの作品が初めてなんですね。
なんでこの作品なのか?
ことの始まりは小学三年生。
当時はいつも家族でスーパー銭湯のような場所に行ってました。
僕は割と長い時間お風呂に浸かるのが苦手なタイプだったので、(今でもそうですが)
その日も家族より先に上がって、銭湯の中をウロウロしてました。
で、いつもならゲームセンターエリアみたいな所でほかの人が遊んでるのを眺めて時間を潰してるんですが、ふとある場所に惹かれました。
それが、リラックスエリア、というか。
リクライニングチェアがズラーッと並んでて、前にスクリーンがあって、それを見ながら寛ぐ、みたいな薄暗い場所です。
その時までは暗いし、タバコくさいしで入らなかったんですけど、背伸びしたかったんでしょうか。 そこに入ってみたんです。
で、そこで上映されていたのが新世紀エヴァンゲリオンの第7話「人の造りしもの」だったんですね。
まず、オープニングから始まるじゃないですか。
それがもう当時は怖いんですよね(笑
なんかいっぱい文字が出てくるし、血は流れてるし、ハダカのお姉さんは出てくるしで、
普通なら怖くなってそこから出たんでしょうけど、なんでかそのまま見続けてました。
で、肝心の内容としては、それも怖かったです(笑
なんかヘンなロボットが暴走して、それを止めるために奔走する、と言ったものなんですが、
暴走しているロボットを止めるために、件の「エヴァンゲリオン」が登場します。
このデザインが怖い!(笑
どう見ても悪役やろ!っていうカラーリングで、ほんとにこれが正義の味方なの?って思いました。
で、このエヴァ初号機が暴走しているロボットを食い止めている間に、葛城ミサトという女の人が耐熱スーツみたいなものを着てロボットの内部に潜り込み、システムを停止しようと試みます。
この内部がまた怖い!(笑
めっちゃ赤くて熱そうだし、狭い!
以前、遊びで土管みたいなものに潜って遊んでいたら服が引っかかって出られなかったことがあったので、閉所がただでさえ怖かったのに、これはあかんでしょと。
で、まあなんやかんやして暴走を食い止めることができて、その話は終わりました。
(エンディングでハダカのお姉さんがまた出てきて怖がりました)
それが終わって、上映室から出ると、心配した家族にどこ行ってたの!って、めっちゃ怒られました。
そしてその夜、寝ようとしてもさっきのことがあってなかなか寝付けないんですね。
心の中で、「夢にエヴァンゲリオンが出ませんように」とお祈りして、ようやく眠ることが出来たんです。
でも、その夜が明けても、脳裏にはエヴァンゲリオンが焼き付いていて。
モヤモヤとしたまま、一週間後にまたその銭湯に行くことになったんです。
で、そこでどうしたか?
また、例のリラックスエリアに行ったんですね。
どうしてあんなに怖がったのに、また見に行こうとしたのか?
今となってはわかりませんが、たぶん、半分怖いもの見たさで行ったんだと思います。
でも、その時はエヴァンゲリオンではなくガオガイガーを上映してました。
(なんだかんだ見たらそれも面白くて、後に見ることになります)
こうなると、もう抑えられずに、次はいつあの銭湯に行けるだろうか、と待ち焦がれるようになっていきます。
もう一度、あの怖いロボットを見たい
もう一度、あの滴る血を見たい
もう一度ハダカのお姉さんを見たい
その一心(?)で、その日を辛抱強く待ち続けました。
そして、ついにその日がやってきました。
新世紀エヴァンゲリオンが上映されていたのです。
その日上映されていたのは、第19話、「男の戦い」。
知ってる人もいるかもしれないですが、かなりショッキングな回です。
とにかくゼルエルが怖い!
そもそも使徒を初めて見たのがその回だったので、とてもショッキングでした。
でも、一回目と違って、
初号機の腕が吹っ飛ばされるグロテスクさ、ネルフ本部で所構わず大暴れするその暴力性に釘付けになりました。
それで僕の中での印象が、
なんか怖い→怖いけどかっこいい
に変わったんです。
そんな紆余曲折がありまして、すっかりエヴァンゲリオンのファンになったのですが、
まあこんな作品を見てることが親にバレたらえらいこっちゃやで、と
どーにかしてこのアニメを親に見つからずに見る方法は無いもんかと模索してたんです。
そこで、ある方法を思いつきました。
おばあちゃん家は、2回に独立したテレビがあり、これに付属しているビデオデッキを使えばなんとか見れるんじゃないかと。
当時は週一でおばあちゃん家に帰っていたので、できないことはない作戦でした。
で、まあVHSを2巻だけ、おばあちゃんにおねだりして買ってもらい
おばあちゃん家に来た途端、2階に駆け上がってこっそりエヴァを見る・・・
そんな風にやってこそこそと見ていました。
それからしばらくして、中学生になったころにiPodを買ってもらいました。
これには動画再生機能が付いていたので、どうにかしてどこかから持ってきて、ようやく全話を見ることが出来た記憶があります。
そこで感じたのが、
小学生時代とのこの作品の感じ方のギャップでした。
小学生時代では理解できなかった人間関係や、演出 世界観が理解できるようになって、
改めてこの作品の完成度の高さを実感することになります。
この時、僕はこう思いました。
この作品がなんでこんなに面白いのか?
当時は、それがわかりませんでしたが、今ならわかる気がします。
それは、謎です。
いやいや、わかる気がするって言っててなんで謎やねーん、ではなく
この作品の中に散りばめられた謎の数々が、人々、ひいては僕を惹き付けてやまない要因であると推察します。
なぜなら古来より人々は、謎が大好きなんです。
謎と言えば、ミステリー小説ですよね。
これの起源は諸説ありますが1841年にエドガー・アラン・ポーが書いた「モルグ街の殺人」という小説が始まりと言われています。
もちろん、ご存知の通りエドガー・アラン・ポーはその後も大ヒットミステリーを連発し、ミステリー作家として後世に名を残すことになります。
これは文化の発展に伴って、単調な物語より謎が含まれている物語がより人々に好まれた証拠であると言えますね。
もっと根源から言うと、宗教も謎がバックボーンになって人気(?)を博していると思います。
キリスト教信者はキリストを、仏教はブッダをそれぞれ信仰していますが、彼らは実際に見たことのない対象、つまりは偶像を崇拝しています。
なぜ、この信仰が途絶えることがないのでしょうか?
まあ、信心深いとか、神が偉大だから、とか色々あるとは思いますが。
結局は、謎に包まれた存在だから、どこまでも偉大であると想像を膨らませられ、信じられたのではないのでしょうか?
まあ、ズレたのでこの辺にしますが(笑
何が言いたいかというと、人々は謎に強く惹かれる傾向がある、ということですね。
(謎が面白い理由についてはまた別の記事で深く掘り下げようと思います)
新世紀エヴァンゲリオンにも、随所に謎が散りばめられています。
例えば、綾波レイ。
彼女は、物語の始まりからよく登場はしますが、彼女自身が何者なのか、何を考えているのか、は後になるまで明かされることはありません。
じゃあこのキャラクターは、どんなキャラクターか分からないから人気がないのか?
決してそんなことはありません。
何故ならば、謎に包まれたそのミステリアスさも要因の一つですが、
僕は、謎に包まれた正体が明かされたから人気があると思います。
何故ならば、普通にエピソード内で最初から、こんな人ですよ、と提示されたキャラクターよりも、
このキャラクターはどんなキャラなんだろう・・・?
と想像を膨らませて、その後正体がわかるキャラクターの方が、前者よりも印象が深く残るからです。
ここで面白いのが、正体が期待以上か以下か、という事です。
その正体について期待していることは人によりけりだとは思いますが、
例えば期待以上だった場合、そのキャラクターには、「なんてすごいやつなんだ!」と憧れて好印象を抱くでしょう。
何故ならば、人は想像していたものよりも凄いものに遭遇した時、その対象をよりよりものと判断する傾向があるからです。
あくまで僕の考えですが。
では期待以下ならどうなるか?
そのキャラクターに対しては、
「思ってたよりも大したことないな」と思います。
これは決してマイナスな印象ではなく、
自分と大して変わらない、と親近感を感じるということです。
ネゴシエーションにおいて、最初は大きな要求をして、その後にそれより小さい本来の要求を
することにより、その要求のウェイトが軽いように感じさせるテクニックと同じです。
また、憧れていた相手が実は自分と近しい存在だったとわかった時、人は親近感を覚えます。
従って、好印象な「大したことないな」なんです。
さて、綾波レイの場合は、そのどちらでしょうか?
答えは、すごいことに両方兼ね備えています。
彼女は最初は主人公に対して、素っ気ない素振りを見せますが、いざと言う時には身を呈して主人公を守ります。
これによって、「思っていたよりも凄いやつだ」と印象付けられます。
また、彼女は人間らしからぬ無機質さで周囲からは異質な目を向けられていますが、
任務終了後は屋台で「にんにくラーメンチャーシュー抜き」というなんとも通な物を口にして、意外な一面を垣間見ることができます。
「意外と人間らしいな」と思いますね。
こんな風に、謎→解決のロジックによりそのキャラクターの肉付けがなされていき、魅力的なキャラクターへと変貌していくのです。
この作品の謎はこれだけではありません。
なぜ戦うのか?
襲ってくる使徒は何者なのか?
エヴァンゲリオンはどうして作られたのか?
なぜ暴走するのか?
ネルフはなぜ作られたのか?どういう組織なのか?
など・・・
見る人に対して次々と謎が投げかけられていき、そしてその謎が解けた時、キャラクターに対しての印象と同じく、「すごい!」「親近感!」と感じさせ、
「面白い!」に繋がるのです。
(人が面白いと感じるタイミングはまだまだあるので、これもまた別の記事で掘り下げます)
さて、ここまで書いてもまだまだこの作品の魅力語り尽くせていませんが、いったんここで〆たいと思います。
少しでもこの作品を見るきっかけになれば幸いです。
続編に乞うご期待。